こんにちは。 ひでまるこです。
2022年は、F1のテクニカルレギュレーションが大きく変わります。
もしかしたら今回の大変更でF1の勢力図が大きく変わるかもしれません。
昨年は、レッドブル・ホンダがドライバーズチャンピオンを獲得しましたが、
コンストラクターズチャンピオンはメルセデスAMGでした。
2014年のパワーユニット変更がなされてから、
7年間メルセデスAMGがトップを守り抜いたことになります。
はたして2022年のシーズンがどのような勢力図になるのか楽しみではあるのですが、
その前に!
2022年のテクニカルレギュレーションは何が目的なのか、
実際にどのレギュレーションが変更となるのか、
こういった疑問について答えていきます。
1.変更の目的
F1を統括しているFIAは、
世界最高峰の自動車レースであるF1を
より楽しく人気があるものにしたいと考えています。
そのためには、F1ファンやドライバーにとって、
よりエキサイティングなレースになるよう
今回レギュレーション変更がなされることになりました。
では、ファンもドライバーもエキサイティングなレースとは、
どういうレースのことなのか?
それは、ドライバー同士がより接近した順位争いができる
またはオーバーテイクの頻度が増えるレースを目指しているようです。
今よりもさらに接近して、抜きつ抜かれつのレースが展開できれば、
F1が盛り上がり、人気にもつながってくることをねらっています。
2.エキサイティングなレースへの施策
2022年のF1は、よりエキサイティングなレースとなるため、
大きく2つの施策が示されました。
① 空力の大変革
② コストキャップ(経費の上限)の設定
2022年のテクニカルレギュレーションの主な変更は、
①の空力の大変革にあります。
②のコストキャップについては既に実施されており、
2021年1月から12月までにかけられる経費は、
1億4620万ドル、日本円で約170億円が設定されています。
2022年のマシン開発も、このコストキャップの範囲内で行われることになります。
人もお金も設備も2022年に向けて、どうリソースを振り分けていくのかは、
既に2021年からはじまっているのです。
3.空力の大変革 その内容は
2022年のテクニカルレギュレーションの変更で
最も大きな空力の大変革とは何か?
それは、
① 乱気流の削減
② グランドエフェクトの復活
③ 18インチタイヤへのサイズアップ
なのです。
1つ目の乱気流の削減は、
2021年のF1マシンを
フロントウィング、バージボード、リアウィングと
三か所に分けて見てみると、かなり複雑な形状になっています。
レッドブル・ホンダのRB16Bだと、こんな感じです。
フロントウィング
![](http://hidemaruko-blog.com/wp-content/uploads/2022/01/F1®-2021_20220116195855.jpg)
バージボード
![](http://hidemaruko-blog.com/wp-content/uploads/2022/01/F1®-2021_20220116195933.jpg)
リアウィング
![](http://hidemaruko-blog.com/wp-content/uploads/2022/01/F1®-2021_20220116200017.jpg)
この複雑な形状は、マシンから発生する乱気流を清流化する役割があったり、
マシンで発生するダウンフォースを増やす役割がありました。
その一方で、形状が複雑でダウンフォースが増えるということは、
それだけ風への影響を受ける、風への影響に敏感だと捉えることもできます。
それがオーバーテイクを減らしている要因のひとつであると考えられているのです。
今回のレギュレーション変更によって、これらマシンの空力パーツについては、
より簡素化されることになります。
その結果、2022年のF1マシンは風への影響を受けにくい、
風に鈍いマシンとなっているはずです。
でも、ここで一つ大きな問題が発生します。
F1マシンのダウンフォースが減ってしまうのです。
風への影響を受けすぎて抜きにくかったマシンが、
今度は風への影響を受けにくくなったことで、
マシン自体に機敏な動きがなくなり、
抜きにくいから、今度は抜けないマシンへとなってしまう。
そこで考えられたのが、
2つ目のグランドエフェクトの復活です。
もともとF1マシンでも前の車を追い抜こうと近づいていくと、
逆に接近した後ろの車のダウンフォースが減ってしまうという
現象が発生していました。
その影響は、10メートル後ろで45%ものダウンフォースが減少し、
20メートル後ろで35%のダウンフォースが減少していたとのことです。
その影響を減らすために考えられたグランドエフェクトを取り入れたマシンの考え方。
グランドエフェクト取り入れたマシンとは、
マシン下面の構造を変えることで、
マシン下の空気の流れが速くなり、圧力が下がることで、
マシン全体が大気圧で上から押さえつけられる効果が得られ、
大きなダウンフォースを発生するというものです。
この効果によって、後方マシンへの影響度は、
10メートル後ろで18%、20メートル後ろで4%程度にまで下がるとか。
2022年のマシンは、ウィング類をシンプルにすることで風への影響を低減させ、
さらにグランドエフェクトの考え方を取り入れた構造を組み込むことで、
純粋に風への影響を受けないダウンフォースを増加させ、
接近戦の多い、オーバーテイクが増えるエキサイティングなレースを
実現しようと試みているわけです。
最後3つ目の18インチタイヤへのサイズアップも空力に関係してきます。
これまでの13インチタイヤでは、ホイールとタイヤの外形との厚みが大きかったので、
18インチタイヤにすることで、ホールとタイヤとの厚みが小さくなります。
実は、レース中タイヤ自体も大きく変化していた、
厚みが大きいとその変化量も大きく、
それが空力に与える影響も大きいと言われていました。
今回の変更で、そのタイヤの変化量が小さくなることから、
空力への影響も小さくなると考えられています。
既にF2では、18インチタイヤが採用されています。
![](http://hidemaruko-blog.com/wp-content/uploads/2022/01/F1®-2021_20220116142745.jpg)
4.2022年テクニカルレギュレーション変更のまとめ
・ マシン全体の空力パーツ(ウィングやフィンなど)の簡素化
・ マシンフロアにグランドエフェクト機構の組み込み
・ 18インチタイヤの導入(2021年は13インチ)
・ マシンの最低重量が752kgから790kgへ引き上げ
・ 2022年開幕戦以降のパワーユニット開発凍結
・ ガソリンのエタノール比率を7.5%から10%に引き上げ
【最後】私がグランドエフェクトについて思うこと
実は、過去にもF1でグランドエフェクトの構造を取り入れた
F1マシンは数多くありました。
1980年代初頭は、まさにF1マシンの構造は、
グランドエフェクトを取り入れたものが主流になり、
グランドエフェクト・カーと言っていたのです。
でも、その構造は後に廃止となったのです。
その理由は、あまりにも速くなりすぎたコーナリングスピードと
ドライバーへの負担から安全性を配慮したものでした。
現在では、既にF2でもその構造が採用されていて、
安全性といった面は、たしかにF1マシンの速さは驚異的ではあるものの、
それなりに計算されているものだと思っています。
ただF1マシンの開発力はすごいものですから、
FIAが思っているほど、そんなにオーバーテイクの多い、
エキサイティングなレースになるかは不明です。
個人的な予想では、勢力図はおそらく変わると思います。
メルセデスAMGがトップでなくなるかはわかりませんが、
メルセデス、レッドブル以外に優勝争いするチームが出てくると思います。
また上位チームと下位チームの差も、さらに縮まると思います。
(ブラウンGPのような画期的なパーツや仕組みがでなければ)
そういった面では、よりチャンピオン争いが激しくなるシーズンになるような気がしています。
以上が2022年のテクニカルレギュレーションの変更点解説になります。
変更の内容のみならず、変更の目的がわかれば、
その通りになっているのか、効果が出ているのか、
そういった目線でもF1を見ることができますね。
開幕が待ち遠しい。